Retropa のストーリー
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深夜、お父さんがひとりソファで灰色の携帯ゲーム機に夢中になり、舌を出している。そばには開けた箱と新聞紙、窓の外は夜空に三日月。翌朝、目をつぶって両手を差し出す男の子に、お父さんがしゃがんで、新聞紙で包んだ小さな包みをのせる。お母さんは戸口で笑っている。男の子が新聞紙を破ると、目が輝く。あのゲーム機だ。胸に抱きしめて笑う男の子の後ろで、お父さんは大あくび、お母さんは口を押さえて笑っている。 -
夜、お母さんがキッチンタイマーを見せると、ゲーム機を抱えた男の子は口をとがらせる。その夜、ベッドの布団のふくらみが、中から懐中電灯の光でぼんやり光っている。お母さんがドアを少し開けて、その光に気づく。お母さんは口の前に指を立てて微笑み、そっとドアを閉める。 -
おじいちゃんはゲーム機を遠くに離して目を細め、男の子が横で一生懸命説明している。男の子が裏の電池ぶたを開けて単三電池二本を見せると、おじいちゃんはあごに手を当てて、覚えこむように真剣にうなずく。次に遊びに行くと、おじいちゃんが得意げに開けた引き出しには、単三電池がぎっしり。男の子が抱きつくと、おじいちゃんは笑って頭をなでる。 -
放課後のゲームセンター。年上の子たちが筐体を囲むなか、男の子は入り口にひとりで立ち、コイン一枚を手のひらにのせている。鼻にばんそうこうを貼った親友がひょいと現れて、自分のコインを掲げてみせる。ふたりは木箱の上に並んで立ち、レバーをひとつずつ握って、叫びながらボタンを連打する。夕焼けの帰り道、ふたりは肩を並べ、ふたつに割ったアイスを一本ずつ持って歩く。 -
夜の帰り道。お父さんが運転し、後部座席の男の子はゲーム機に顔を近づけて目を細める。画面にはライトがなく、暗くて見えない。ルームミラーの中で、お父さんの目が後ろをちらりと見る。小さな車がオレンジ色の街灯の下をゆっくり通り、後ろの窓から光が差しこむ。画面が明るくなり、男の子はこぶしを突き上げる。家に着くと、お父さんは男の子を抱いて階段を上る。肩にもたれて寝たふりをする男の子は、片目をそっと開けて笑っている。 -
鉛筆の線が並ぶドア枠で、お母さんが男の子の頭の上に新しい線を引く。十五歳になった彼はヘッドホンをかけて、ゲーム機が入ったままの引き出しの前を通り過ぎる。引っ越しの日、ゲーム機は段ボール箱の底にある。二十二歳の彼がスーツケースを引いて家を出ていき、お父さんと白髪になったお母さんが戸口で手を振る。 -
ゲームに行きづまった男の子が、しかめっ面でゲーム機をお父さんに差し出し、お父さんは笑って手を伸ばす。三十年後、同じ黄色いソファで、白髪のお父さんが目を細めてスマートフォンを大人になった息子に差し出し、息子は笑って手を伸ばす。息子が画面の上で二本の指を広げ、表示を大きくする。お父さんはやっと見えるようになって顔をほころばせ、息子は隣に座って肩を抱いている。 -
何年も後、運転しているのは彼だ。後部座席では娘がスマートフォンでゲームをしていて、画面の光が顔を照らしている。家が近づくと、娘はスマートフォンをひざに置いて、ぎゅっと目を閉じる。まつげが動いている。寝たふりだ。ルームミラーの中で、彼の目が娘をちらりと見て、目じりが下がる。彼は娘を抱いて階段を上る。肩にもたれた娘は、片目をそっと開けて笑っている。
「あなたを愛してくれた大人たちへ。 そして、いま大人になったあなたへ。 時は過ぎても、 ぬくもりと子どものころは変わらない。」